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新規参入でじわじわ削られる成熟企業
以前、お取引があったお客様で神棚にお供えする榊を販売する会社がありました。
5年くらい前だったと思いますが、榊の業界は、かなりの成熟していた業界で、さほど目立った新規参入もなく、ずっと安定して地域のお花屋さんが地域のお客さんから注文をもらっていました。
また、榊を卸しているお花屋さんも同じで、増えるわけでも大きく減るわけでも無い業界でした。(徐々には減っていましたが。)
そんな、安定的で平和な業界でしたが、ある業界が参入して一変しました。
それがネット定期便の会社です。母体は榊屋さんだけでなく、ネットの受注専門会社でした。
この定期便はお客様からすると、理にかなっていて、榊の場合、月に決まった日にちに必ず交換しますので、その日に勝手に届けば、買いに行く手間が省けます。
おまけに、売上が安定しているので、お客様だけをどんどん増やす為に、広告を多く投下していました。
さらに仕入れが増えるからスケールメリットで価格も安くしており、勝ち目が無い状態になっていました。
定期便の勝手に届くモデルは、お店までが遠い、地方にとっては一番入ってきてほしくないものかもしれません。
定期的に買わないといけないけど、買いに行くまでの利便性が悪いという不満をもっていれば、そんなサービスが現れれば当然そちらに移ります。
結局ここの会社も同じようなサービスで対抗し、国産であることを武器に戦いました。
しかし、成熟市場で長年やってきたにも関わらず、定期便榊という業界ではもう後発の会社になってしまいましたので、苦戦しました。
サービスにはサービスで戦うしかないのか?
先ほどの国産榊の会社の場合、「うちは国産だから絶対勝てる」という考えで参入しましたが、以外にもそこで苦戦しました。
すでに、定期便の中国の榊を導入されているお客様の乗り換えを狙えると考えていました。
しかし、その見込みは外れ、中国産榊ですが品質は良く、価格もやすい為、満足されていました。
その為、国産だからと提案に入ろうとしても、「高い」という判断になり、すでに導入されているお宅に割って入るのが難しい状況でした。
しかたなく、価格を下げるなどの施策を打たざるを得なくなりましたが、国産の為、競合と同じ水準にしようとするとかなり薄利になってしまいます。
最終的に、競合が入ってい無いところを見つけて参入していく流れになりました。
このように、いくら成熟市場で長年やっていても、つながりが強固でなければ、新しいサービスの参入で、ぐらついてしまいます。
また、そこからサービス・商品で巻き返すとなると、価格訴求や無理な施策(無茶な納期)に頼らざるを得なくなります。
ザイアンスの法則(単純接触効果)
新商品や価格のやすい競合サービスからお客様を守るには、サービスと商品を競合と同等のものにするというのはもちろんですが、もう一つは「多く接触する」という事です。
ザイアンスの法則とは、簡単にゆうと、接触頻度に比例して好感・好意を持つ心理です。
たくさんの例がありますが、ある方のブログに「クラスメートの隣の人を好きになるのもその法則のせい」と書いてありました。笑
なんとなくわかる気もします。逆にクラスが変わって離れると好きではなくなって、「あれはなんだったのか」とはっと我にかえる感じ笑
これをうまく利用しているものは、私が見てきた中にもたくさんあります。
高速から見える屋上看板広告
これは、バイク便の会社がおっしゃっておりました。
ここの会社は、高速道路から見える大型の看板と、リスティング広告(web広告)のみで集客していました。
いつも高速から見えているので、とても大きい会社と思っていましたが、行ってみると規模は大きいわけではありませんでした。
社長いわく「いつもあの看板を見ているから、リスティング広告を見たときにすごい有名な会社と思って依頼を受ける」とのことでした。
看板を見て直接の依頼を狙うのではなく、心理的に「バイク便なら◯◯」というのを高速の看板で植え付けています。
ネット古着買取の店舗戦略
ネット上で、古着の買取を行い、それをまたオークションなどで販売する買取店の戦略です。
ここは、売上でいうと満足なレベルまでいっていて、会社のブランドを高めたいという事で、若者の通りが多い場所に立ち上げられました。
ここでの目的が、店舗での販売をメインにとらえているわけではなく、ネット広告が表示された際に「なんか知ってる」という認識を持ってもらうのが重要で店舗を建てられました。
買取などの場合、適正価格かどうか不安をもたれる方もいますので、安心できるブランドイメージを作る為に、人通りの多い場所に店舗を構えられました。
冷蔵庫の磁石
広告で、「水漏れの際はお電話ください」というマグネットの広告を見た事はありませんか?
今は当たり前になっているかもしれませんが、最初は「磁石だったら」ということで捨てずに冷蔵庫に張っていました。
昔実際に水漏れが起こった際に、連絡先が目の前に飛び込んできたので連絡をした経験があります。
今はどれほどの広告効果があるのかわかりませんが、接触頻度とならんで、トラブルが起こった際に目に触れる順位というのはとても重要かと思います。
トラブルや、物の買い替え、消耗品が切れたとき、そのタイミングで最初に飛び込んできたところが有利になったりします。
常にお客様の「もしも」のタイミングのそばにいるのは重要かもしれません。
地域密着型のメガネやさんの無料修理
このメガネ屋さんは、スーパーの専門店売り場にある昔ながらのメガネ屋さんで、今でこそ、3プライスでメガネが一万円を切る時代になりましたが、昔は10万円以上することもざらにありました。
そんな中、成熟していたメガネ業界に3プライスのメガネ屋さんが現れたのもあり、ピンチに立たされました。
この流れにのって、自社ブランドの安売り路線でいくことも可能でしたが、今の顧客を分析すると、ほとんどの方が地域の方という事がわかりました。
そこで、そのお客様が次の買い替えの時(一回のサイクルが2年くらい)に必ず足を運んでもらえるように、メガネの修理と洗浄を無料で行うサービスを始めました。
お客様は、スーパーに立ち寄った際にちょっと洗浄をするようになり、その際営業をかけなくてもお客様の方から目の相談などをしてくるようになりました。
カスタマーセンターブログ
こちらは、化粧品メーカーのカスタマーサポートセンターの方法になります。
サロンへの商材販売がメインとなっていたため、サロンの代表や購入担当者に電話などで営業をする担当がいました。
この会社が取られていた方法は、毎日「会社のブログ」ではなく、「それぞれの社員のブログ」の更新を義務付けていた事です。
しかも、自社の製品のPRに関しては、2割くらいであとは、好きなお菓子とか事務所での日常とかを掲載されていました。
社長曰く、ネット上かファックスなどで受注していて、対応はほぼほぼ電話で、ほぼ接触する機会がない。
相手からすると、サポートの人の人となりが見えないから、カスタマーサポートの人間がどんな人間なのかを毎日届けているそうです。
これは、YouTuberや生放送主も同じような考えで、売れている一部の人は絶対に1日一本の動画を配信すると決めている人が多くいます。
感覚的に「少しでも期間が空くと飽きられる」と考えられる方が多いようです。
まとめ
ずいぶん前にキミがこの本を買ったワケという購買心理をポップに書いている本を読みましたが、そこに、「アイドルは魔法のヴェールに包まれている」というような(ずいぶん前なので、正確ではないかもしれません笑)事が書かれていました。
内容は、ずっと好きだったアイドルやバンドが少し活動休止とかおやすみに入ると、「なぜあんなに好きだったんだろう」と自分に不思議に思うことがあるというような内容でした。
いつも目に触れるというのは、心理的にとても好印象を与えるというのは事実なのでしょう。
ただ、継続が難しいというのもあります。
接触すれば、継続してくれるものの代表がルート営業の営業マンかもしれません。
何度も足を運んでいれば印象がよくなるだけでなく、「その人が好き」になってなかなか断りにくかったり、業者を乗り換えにくいものです。
しかし、担当がやめるとなると急に「これを機に見直そうと思っている」という悲しい話のきっかけになったりもします。
また、毎日はさすがに営業マンの方も商品を売りにいったり御用聞きにはいけませんから、「自分が毎日取引先の目に触れる方法」を模索する事で、競合が良い商品を出してきても、「人の部分」でつながって顧客離れを防ぐことができるでしょう。